Taichi Kaminogoya

書籍「はじめての UI デザイン」刊行に寄せて

2019年4月8日に「はじめての UI デザイン」の一般販売が開始されました。クラウドファンディングで支援してくださったみなさんの手元には少し早く、3月30日あたりから届きはじめたと思います。

私は技術書のほとんどを電子書籍で買うのですが、本書の製本版は、ほど良いボリューム感と肌ざわりで、製本された書籍って良いな、と感じられる出来で気に入っています。表紙のコンパスの絵も書籍のコンセプトを見事に表現していてとても好きです。

私が担当したのは3章「UI の見えない部分を学ぶ」です。私は本書で各章に「ゴール」が設定されているのが良いなと思っています。最初に目標を示すなんて、デザイナーが集って作った書籍らしい素敵な趣向だと思います。ちなみに私が担当した3章のゴールは次のように設定しました。

  • 作るものの要件からUIデザインまでに必要なプロセスを知る
  • 見た目から独立した情報の構造を設計できるようになる
  • プロダクト開発におけるデザイナーの役割と関わり方を理解する

章の内容は、ターゲットユーザーを決めて動かし、欲求と価値を設定してシーンや行動操作のイメージの解像度を高めてターゲットユーザー像を具体的に。具体的になったユーザー像をたよりに情報構造の設計、オブジェクトの抽出、UI モデリング、ナビゲーション設計を行い、ペーパープロトタイプを使って画面のレイアウトを考える、抽象度の上げ下げを行いながらアイデアを具現化していくプロセスについて書いています。

言語化するにあたり、プロセスの進捗を確認するマイルストーンとして意識できるように、出来上がる成果物も具体的にリストアップしました。また、デザイナーの役割や、組織の中での振舞いなどについても、私なりの考えとして書きました。

ちなみにここでの「ターゲットユーザー像を具体的に」とは、精度をそれほど求めるよりは、まず向う方角のあたりをつけるくらいのものです。書籍なので順序だてて書いていますが、実際は平行して進めるプロセスもあるので、あまり時間をかけてやるような内容ではありません。また、一方通行に完結するものではなく、進める過程で再考が必要になり、特定のプロセスまで戻ったりするものです。

本書は UI デザインを体系的に学び、理解を深めるための書籍です。ですので、3章でもアプリの UI デザインが題材となっていますが、ターゲットを決めて目的達成までのプロセスを設計するのは「デザイン」において普遍的なものだと思っています。なので根本となっている思考の流れについては、アプリの UI デザインに限らず、さまざまなシーンで活用できるものです。

デザインをデザイナーだけでやらない今日、デザイナーに限らず、さまざまな人のデザインへの興味を深めてもらえたら嬉しいです。


本書は、吉竹さん (@ryo_pan) の企画、呼びかけではじまり、ROLLCAKE 株式会社の技術書クラウドファンディングサービス、PEAKS で出版しました。PEAKS の仕組みは、とてもおもしろくて、支援してくれたみなさんには原稿の段階で公開してレビューをいただけます。これがまた、みなさんとても積極的で多くの学びがあり、原稿がアップグレードしていく感覚がとても新鮮でした。

支援いただいたみなさんからの期待がほどよいプレッシャーにつながり、原稿を書き進めたり、改変していくのが楽しかったです。支援、レビューいただいたみなさんに、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

共著者のみなさんは、元同僚や、いつかデザインの仕事をいっしょにやってみたいなと思い尊敬している方々です。ミーティングの度に感じたのは、それぞれ自分や他の著者が書く内容はわかっているし、原稿についてのレビューや意見交換も「いいものつくろう」っていう共通の目標のがあるので、わいわいできて、楽しくて、多くの学びも得られました。

吉竹さん (@ryo_pan)、池田さん (@tikeda)、元山さん (@kudakurage)、宇野さん (@saladdays)、坪田さん (@tsubotax)、本当にありがとうございました。


本書は、UI デザインの背景や基本を知り、さらにもう一歩理解を深めて、得られたり持っている知識を活用できるようになるのを手助けできるものに仕上がったと思います。

著者それぞれの経験を言語化した単なる手法の紹介ではない実践的な内容です。初学者に限らずデザインをやってきたひと、デザイナーといっしょに働くエンジニアやプロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、デザインを大切にしたいと思う経営者の手元にあっても良い書籍になったと感じています。